広陵高校・中井哲之監督が語る「男らしさ」

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広陵が目指すのは「愛される高校球児」

高校野球は人間形成の場だと語る広島の強豪校・広陵高校の中井哲之監督。
創部100年を超える歴史を持つ名門が大切にしている「愛される球児」という精神とは…

今回はそんな球児たちをプロに社会に輩出してきた「中井イズム」について触れていきたい。



野球が上手くなるより人間形成「広陵・中井イズム」

「高校野球は人間を学ぶところなんよ」

広島・野村、巨人・小林、日ハム・有原…現役だけでも数え始めるときりがないほどの人数をプロに輩出している名門・広陵高校。
その広陵高校で1990年より監督を務め、来年で30年目を迎える名将・中井哲之氏はそう語る。

「誰のおかげで野球ができとるんか、絶対に忘れるな。
親には、感謝。『ありがとう』と『おかげさまで』の精神よ」

今時、精神論は流行らない。
世間では、そう言われるが中井監督の指導するのは通常とは少し異なる「感謝」の精神論。
それが広陵高校の強さにつながっている。

「野球部の人間には、みんな男らしくなってほしいんよ。
男らしいっていうのは、腕っぷしが強いとかそういうことじゃないけぇのう。
素直で正直者。常に感謝を忘れない、社会のどこへ出ても恥ずかしくない人間のことを言うんじゃ。
野球だけ上手くて、それで甲子園優勝しても何も意味ないけぇのう。
皆さんに応援されて、愛される。それで勝つんが本物よ」

野球をやる上で、技術より大切なものがある。
そう語る中井監督の目は真っ直ぐだった。

「わしは曲がったことが嫌いなんじゃ。
常に直球で勝負するんよ。じゃけぇ、お前らに伝えるのも全部直球よ。
それに対して嘘ついたりして変化球で返してくるな。
人は誰だって間違えるんじゃけぇ、間違えたら素直に謝りゃええんよ」

しかし、中井監督は指導する際に、間違いを指摘しても部員に謝らせることはない。
普通なら指導後は「申し訳ございません」という締めくくりになると思う。
だが、広陵高校に「申し訳ございません」は存在しなかった。

「指導してもらったら、最後は『ありがとうございました』よ。
一般的に言えば間違っとるんかもしれんけど、指導していただいたことへの感謝がそこにあるんよ。
間違ったことに対して謝るんも大切じゃけど、その指導には自分に対する愛があると思わんか?
何も言われんようになったらおしまいよ。
『指導、ありがとうございます』その方がお互い気持ち良かろうが」

広陵高校では、どんな時でも最後は「ありがとうございます」だ。
それは親や野球部関係者だけではない。

「学校ありきの野球部じゃけぇのう。
学校生活は常に全校生徒の見本となって、少しでも先生方が楽できるように協力するんよ。
挨拶も一番大きな声で気持ち良くするし、素行の悪い生徒がおったら先生より先に注意する。
野球部が甲子園出たらみんなが応援に来てくださるんじゃ。当然のことよ」

広陵高校硬式野球部は、国技ならぬ「校技」と呼ばれている。
それは強いだけでなく、こういった人間性の部分からの要因もあるだろう。

チームが掲げる「ありがとう21」というスローガンにも、感謝を持って日本一(21)になるという意味が込められている。

中井イズムが目指す「男らしさ」。
それはどの時代も変わらない「感謝」の心から生まれる。

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